支払い・強制執行から免れる目的だった!
保有していた暗号資産を自己破産前に隠して、債権者の債権回収を妨害しようとして、警視庁は、山中一也(37)山梨県韮崎市を破産法違反(詐欺破産)容疑で逮捕した。
暗号資産の隠蔽行為に同法違反容疑を適用するのは珍しい。捜査2課によると、山中は昨年1月、国内の暗号資産取引所の口座に所有していたビットコインなど9種類の暗号資産を15回にわたってアイルランドの取引所に送信して隠した。その後、同年3月、財産が現金数万円とパソコンなどしかないとして自己破産の開始決定を受けた。
山中は以前、コンピューターグラフィックス(CG)を手がける品川区の会社に勤めていたが、退職後も当時の顧客から仕事を請け負っていたとして元の勤務先から訴訟を起こされ、一昨年の20年6月に東京高裁で約3千万円の賠償を命じられていた。
山中は調べに「少しでも財産を手元に残しておきたいと思った」と話している。同課は賠償金の支払いを免れる目的だったとみている。暗号資産は男の破産管財人によって今年4月までに回収され、その価値は約1600万円まで値上がりしていた。
詐欺師から
隠し資産を暴いて回収するーー
詐害行為とはーー
債務者が悪意を持って、自己の財産を隠し、或いは他人名義にして債権者が正当な利益を得られないようにすることだ。 債権者側からすると、強制執行の対象となる財産が失われてしまったら、債務者から債権を回収できなくなってしまう。そこで債権者は一定の場合に取り消すことができる。民法424条「詐害行為取消権」 原則として、債務者の財産は換金され債権者に配当される。
詐害行為取消し権について
現在では、民法424条から26条まで、債権の回収をするための役割を果たしている。
詐害行為取消し権の要件ーー。
1ヶ条の規定あるのみだが破産法などの改正を踏まえ、より具体的な行為類型ごとに要件を明確にした。
改正法案では、この行為類型ごとの要件の特例を定める規定を新設「詐害行為取消し権」の行使方法に関して
1,逸失した財産の債務者への返還請求権等の明確化
2,債権者から相手方への直接の支払請求等の明確化
3,取消し可能な範囲についての明確化をしている。
現行法は、詐害行為取消し権を行使する債権者が、行為の取消しのほか、どのような請求ができるかを明示的には定めていない。判例は、財産を取り戻して責任財産の保全を図るという目的を達する観点から、債権者は詐害行為取消し請求において、行為の取消しだけではなく、その行為によって移転した財産の返還を請求することができるとしている。
改正法案では、その旨を明文化するとともに、その財産の返還をすることが困難であるときは、その価額の償還を請求することができる。
次に、債権者から相手方への直接の支払請求等の明確化であるが、例えば、受益者への金銭の贈与について詐害行為取消し権を行使した場合において、受益者に対して債務者への金銭の返還を請求することができるのみで債権者はその受取ができないとすると、債務者が受領を拒否したときには責任財産の保全という目的は達成することができない。そのため、現行法に明文の規定はないものの、判例は詐害行為取消し権を行使した債権者は自己への金銭の支払などを求めることができるとしている。そこで、改正法案においては、その判例に従いその旨を明文化することとしている。