UUUMを上場廃止 業績低迷

UUUM 2度目のTOBに至った経緯とその深層

華々しいデビューから7年余り、国内最大手のYouTuber事務所が株式市場を去る。

UUUMの株価2度目のTOBに至った深層の推移は—。

11月14日、フリークアウト・ホールディングスは、傘下の大手YouTuber事務所・UUUMに対し、完全子会社化を目的とするTOBを行うと発表した。これによってUUUMは早ければ2025年3月にも上場廃止となる。

フリークアウトは2023年9月、インフルエンサーマーケティング市場への進出を目的に、TOBによって約77億円でUUUMを買収、現在は同社が発行する株式の50.9%を保有している。2度目となる今回のTOBで残りの株式を買い集める。

フリークアウトの発表と同日、UUUM側もTOBに賛同し、株主に対して応募を推奨すると公表した。買い付け期間は11月15日から12月26日まで。買い付け価格はリリース前日の終値363円から46%のプレミアムを付けた1株532円で、フリークアウトは約53億円を投じる。

UUUMを上場廃止 業績低迷」への1件のフィードバック

  1. 創業わずか4年で上場を果たすが・・・

     UUUMは創業からわずか4年後の2017年8月に、東証マザーズ(当時、現・東証グロース)に上場。YouTubeの人気の高まりとともに急成長を遂げ、2019年には時価総額が1000億円を突破した。

     しかしその後は収益柱であるアドセンス収入の伸び悩みなどから業績が低迷し、株価はピーク時の10分の1以下に沈んでいる。

     フリークアウトは2023年の買収以降、自社のノウハウを生かしたYouTube動画のデータ解析やファン層の分析、管理部門統合によるコスト削減など、UUUMとのシナジー創出に向けた施策を推進。UUUMの上場企業としての独立性を尊重しつつ、同社の収益を押し上げる算段だった。

     ところがUUUMの2024年9月期は売上高275億円と、前年同期比8.9%の減収に陥ってしまう。ショート動画の隆盛やクリエイターとの契約形式変更により、アドセンス収入は徐々に減少。さらにインフルエンサーマーケティング市場の競争環境が激しくなる中で、タイアップなどのマーケティング事業も落ち込んだためだ。フリークアウトは営業統括の経験がある役員をUUUMに送り込むなどマーケティング事業のテコ入れを図ったが、効果が出るまでに時間を要している。

    既存の取り組みだけでUUUMの売上高を上向かせることは困難とみたフリークアウトは2024年4月上旬、売り上げ成長とコスト削減の両側面から、さらなる部門統合や人材配置の最適化など、踏み込んだ連携が必要との考えを持ち始めた。

     また、グループ全体のインフルエンサーマーケティング事業拡大を見据えたとき、フリークアウトはYouTubeに限らず、各種SNSにおけるマネジメント業やグッズ・ライブといった周辺ビジネスなど、UUUM以外との資本業務提携も重要になると見込んできた。実際にさまざまなM&A案件が持ち込まれる中、グループ戦略としてフリークアウト側が出資し、協業先との具体的な取り組みには、知見のあるUUUMの人員リソースなどを動員する青写真も描いていた。

     こうした経緯から、フリークアウトは5月中旬から下旬にかけて、UUUMの完全子会社化が必要不可欠であるという考えを深めていった。

     UUUMとしても、株式の出来高や時価総額、直近の業績が低迷している点を踏まえ、市場からの資金調達という上場維持のメリットを享受することが困難になっていた。UUUM経営陣の間では、株式市場からの短期的な目線にさらされることなく、中長期的なクリエーターへの投資を進めたい考えもあった。

     両社は3月頃から、非上場化による抜本的な対策を講じなければ、営業赤字が恒常化するという危機感を共有してきたという。結果、6月から今回のTOBの協議に入り、買い付け価格の交渉などを経て、提案を応諾することとなった。

     なお、フリークアウトは1回目のTOBに当たり、創業オーナーだった鎌田和樹氏との間で、公開買い付けにかかる決済の開始日(2023年9月15日)から6カ月間は、当時の公開買い付け価格727円と異なる価格で別途公開買い付けを実施する場合、鎌田氏から事前に承認を得なくてはならない契約を結んでいた。

     当時こそ別途の公開買い付けを実施する予定はないと明記していたフリークアウトだが、この期間が明けたとたんに話が進んだことを踏まえると、従前から完全子会社化を意識していたことが透ける。

    今回、晴れて完全子会社化を果たせば、UUUMの上場維持コストはもちろん、オフィス統合による費用削減を合わせて、年間数億円のコスト削減が見込まれる。前述のインフルエンサーマーケティング企業との提携については、TikTokやインスタグラムに強い企業を物色していく方針だ。

     11月19日の決算説明会でフリークアウトの永井秀輔CFO(最高財務責任者)は「広告主からすれば、マネージャーをぴったりつけるほどの規模感ではないマイクロインフルエンサーも、ある程度の属性でセグメンテーションし、広告を出していきたい領域だ。この領域でも(ターゲティングに長けている)DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)に近いことをやっていきたい」と意気込みを語った。

     ただ、UUUMの事業展望が不透明であることから、説明会の質疑では「資本効率を考えると、UUUMの完全子会社化よりも、自己株買いなどの株主還元を優先するべきでは」といった指摘が飛んだ。こうした懸念を払拭するには、完全子会社化によってシナジー創出のスピード感が上がったことを、UUUMの収益面やM&Aの加速で示さなくてはならない。

     また今回のTOBが成立すれば、フリークアウトに次ぐ大株主であり、UUUM創業メンバーでもある人気YouTuber・HIKAKIN氏が株式(現在の保有割合は2.2%)を手放すことになる。会社の在り方が大きく変化する中で、今回のTOBのメリットを丁寧に説明し、所属クリエーターらを束ねる求心力を維持できるかも重要なポイントだ。

     UUUMの再建、そしてM&Aの加速を通じて、フリークアウトはインフルエンサーマーケティングの総合企業への道を歩む。グループ内外ともに山積みの課題を1つずつクリアしていく必要がある。

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